azukki的. 姉妹猫mao(黒)とmeo(銀)、天国のノア(黒白) 空と花と石と美しいもの。


1週間前の今日、1月11日成人の日。
今日みたいに暴風雪警報なんて出ていない、日ざしのある穏やかな休日だった。
デヴィッド・ボウイの新作CD『★(Blackstar)』が届いた。
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どういう心境の変化かジャズミュージシャンを起用した新作、なのにジャズというよりもロックで、どこまでもボウイ。

それを聴いているときに流れてきたツイート。



「2016年1月10日 デヴィッド・ボウイは、18ヶ月のあいだガンと果敢に戦った末、本日家族に看取られ安らかに息を引き取りました。」
(David Bowie公式Twitterアカウントによるツイート)





信じられなかった。






ボウイは2016年1月8日、69歳の誕生日を迎え、『★(Blackstar)』はその日にリリースされた。
Instagramの公式アカウントによる当日のポストがこちら。


同時にアルバム全曲の音源をネットで公開していた。

そのうち、アルバム発売に先行して公開されていた動画がこちら。

「★」




「Lazarus」

歌詞和訳



ボウイの形相は鬼気迫り、肉は削げ落ちて、不吉なムードが漂う。
「Lazarus」はあからさまに死の床のようでもあり、まるで幽体離脱したかのような彼は最後、クローゼットの中へ自ら入り、扉を閉じる。
でも、それは彼のパフォーマンスだと思っていた。

デヴィッド・ボウイが死んだ?
嘘。ありえない。
信じられなかった。
信じたくなかった。
体が震えて涙が出てきた。

新作発表の2日後に亡くなるなんて。
音源はすでにネットを通して聴いていたけれど、アルバムが手元に届いたその日に、我が家でそれを聴いているその日に、訃報だなんて。


その日の夜のポスト。


写真はボウイを長年撮ってきたPhotographer、Jimmy King氏のもの(2013年撮影)。





身内以外で、誰かが亡くなって、こんなにショックで悲しいなんて、あまり経験がない。
自分の中で、それほどにデヴィッド・ボウイという人の存在が大きかったことに驚く。
まだまだ生き続ける人だと思っていた。
まだまだ変化し続ける人だと思っていた。
いや、それは正確じゃない。
そんなこと思わないくらい、ボウイがこの世からいなくなることなんて、かけらも想像していなかったし、全く覚悟していなかった。
あまりにも、突然だった。




学生時代、先輩にも同級生にも後輩にもボウイファンがいて、彼らからボウイを教わった。
カセットテープにレコードをダビングしてもらった。
だから古いアルバムはカセットテープしか持っていない。
彼の音楽をCDで初めて聴いたのは『Let's Dance』(1983年)だった。
先輩がポータブルCDプレーヤーで聴かせてくれた、イヤホンで聴いたクリアな音が忘れられない。
先輩のはからいで、その年の来日ツアー「Serious Moonlight Tour」(大阪万博公園)に行くことができた。
私の唯一のボウイライブ体験。
野外ステージで座席はなくオールスタンディング。
「Heroes」イントロで観客がステージに押し寄せ、演奏は一時中断。
負傷者も出たそうで新聞にも載ったいわくつきのライブ。
長時間列に並んで、カップヌードルを食べたのを覚えている。
あの先輩もどんなにか今悲しんでいるだろう。
ボウイの歌詞を自分で和訳したノートを見せてくれたっけ。
映画『戦場のメリークリスマス』の封切りもその年だったろうか。
坂本龍一の音楽が衝撃で、俳優としてのボウイが演じるジャック・セリアズの妖しさ美しさの虜になった。
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変化し続けるボウイが好きだった。
いつでも一番新しいボウイが好きだった。
いつでも最新作が最高傑作だった。
終わりが来るなんて、思っていなかった。
もう、新しいボウイに会えないなんて。




『★(Blackstar)』の最後の曲「I Can't Give Everything Away」

歌詞和訳

訃報を知ってしばらくは、この曲のリピートをとめられなかった。
聴いていると泣いてしまうのに、聴くしかなかった。
なんて優しくあたたかく光に満ちた音楽だろう。
曲の終わり、光に包まれて、粒子になって消えていくようで、悲しいのに幸せで、何かあたたかいものが広がっていく気が、する。
この曲を最後に遺してくれたボウイに感謝する。
まだまだ、辛いけど。




新作をのぞいて、一番好きな曲はと訊かれたら迷わずこれ。
何十年聴いても圧倒的にベスト1。






ちなみにドイツ外務省は「あなたは今や我々にとってもヒーローです。壁の崩壊に手を貸してくれてありがとう。」とツイートして、ベルリンの壁の下で愛し合う男女を歌ったこの曲のライブを紹介、追悼の意を表しています。


詳細はこちら




『★』をボウイとともにプロデュースしたTony Visconti氏は自身のFacebookに次のようなコメントを発表しています。

「He always did what he wanted to do.
And he wanted to do it his way and he wanted to do it the best way.
His death was no different from his life - a work of Art.
He made Blackstar for us, his parting gift.
I knew for a year this was the way it would be.
I wasn't, however, prepared for it.
He was an extraordinary man, full of love and life.
He will always be with us. For now, it is appropriate to cry.」

このコメントの和訳も含め、他の人々の追悼の辞が以下の記事にまとめられています。
「トニー・ヴィスコンティ、デヴィッド・ボウイへの追悼のコメントを発表」





地球に落ちてきた男が、故郷の星に帰ったのだ、と言う人もあった。
でも、願わくば、もう一度、落ちてきてほしい。
Can you hear me、Mighty Tom?


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デヴィッド・ボウイ、死後まもなくニューヨークで火葬されたことが明らかに










(娘が生まれるまで、ボウイという名前のオッドアイの白猫を飼っていました。)
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by azukki_bio | 2016-01-18 17:16 | 音楽、本、映画・・・ | Comments(0)